ヨージョービギナーズガイド #17 ムジナの庭 鞍田 愛希子さん編 Vol.3
「養生ビギナーズガイド」は、身体やこころの養生となるモノ・コト・トキなどをレビューしシェアする連載。
読んでよかった書籍、使ってよかったモノ、心地よさにつながる時間etc…
今回は、先日イベントをご一緒した「ムジナの庭」を主宰する鞍田 愛希子さん。
東京・小金井で、身体やこころのプログラムを中心とした福祉施設を運営されています。
3回に渡りお届けしてきた、「ムジナの庭」さん編。
養生ビギナーの私とともに、“あなたの養生”のヒントになれば嬉しいです!
ムジナの庭 鞍田 愛希子さん編 Vol.3
<ヨム養生> 『いのちをむすぶ』佐藤 初女 著 / 岸 圭子 写真
「養生」という言葉で連想したのは、やっぱり、この方。
医療や福祉などの枠組みとは全く違うやり方で、疲れ切った人たちの心身を「おむすび」を通して癒していく。
まさに、「いのち」を「むすぶ」活動を青森「森のイスキア」という拠点で、長年続けられていた、佐藤初女さん。(*1)
直接会ったことはないけれど、私の曾祖父は牧師でした。
その影響で、祖母は信仰心の篤いプロテスタント。けれど、祖父は仏教徒。
ちょっと不思議な環境で育った父。
色々な事情から、私たち家族は特定の宗教を選ぶことはしませんでした。
ですが、私も小さい頃は教会へ通ったり、祖母の家のオルガンと一緒に賛美歌を歌うこともありました。
そんな幼少期が関係しているのかどうかは分かりませんが、
大人になってから、私のこころを強く動かす人は、キリスト教と深い関係があることも。
それが、北海道「浦河べてるの家」と、青森「森のイスキア」。
様々な環境から、心身が混乱状態に陥った方たちや、生きることを諦めたくなった方たち。
べてるは笑いやユーモアの力で、どんどん仲間の中に巻き込んでいく。
イスキアは、いつでも温かな「おむすび」と「ただ在れる」場を提供してくれる。
宗教と福祉は、切っても切り離せない関係にありますが、生死を尊ぶ祈りの気持ちというのは、宗教に限らず、福祉の原点でもあります。
貴重な場が、日本からまた一つ消えてしまったことを憂いながらも、(*2)
こころは受け継いでいきたいなと思うとき、初女さんはどんな風に「聴いて」いたんだろうか、と、この本を開きます。
”「自分のことを話したい人はいっぱいいるけど聴く人がいない。
だから、聴く人になってください」河合先生からの遺言です。”
”聴くことは受け容れること。それは自分を開くことです。”
ー河合隼雄先生からの遺言ー
”苦しみの渦中にいる人には立ち入りすぎず、
孤独にさせない さりげない距離感が大切です。
いろいろ言葉を尽くすより 黙って見守るほうがいいですね。
急がないで、ゆっくり心を通わせることです。 ” ー沈黙ー
”人を癒していると思ったことはありません。
人の心はたいへん深いものだから 人に人は癒せないと思うのです。
癒しとは、自らの気づきによって心を解放したとき
はじめて得られるものでないでしょうか。” ー癒しー
誰かとの間合いや温度、気配が伝わってくる言葉の数々。
「聴くこと」が当たり前にならないよう、リセットしたいタイミングのとき、パラパラとめくって頭や心を養生しています。
*1 初女さんは「日本のマザーテレサ」と言われ、カトリックの信者でもありました。
*2 初女さんが亡くなられ、2016年に「森のイスキア」は閉じられました。
画像提供:ムジナの庭
今回おしえてくれた人
鞍田 愛希子さん
「ムジナの庭」主宰 /精神保健福祉士・社会福祉士
植木屋、花屋に勤務ののち、2011年に植物と哲学の実験工房「アトリエミショー」設立。
心と体に深く作用させる植物教室を各地で手がける。
その後、福祉への関心を深め、就労支援施設やフリースクールでの活動を経て、2021年3月、東京都小金井市に「ムジナの庭」を開設。
植物や身体を糸口としたケアの場の提供を試みている。
https://atelier-michaux.com
instagram @atelier_michaux
©️Mao Yamamoto