からだせんせい相談室|冷えのお悩み 前編
まもなく秋分となります。
秋分期は気候も身体の変動も大きい時期。
身体のことを正しく知り、必要な養生法を手に入れて、毎日をすこやかに過ごしたい。
そんな思いから、日本身体文化研究所の矢田部英正先生にお話を聞く連載企画。
「からだせんせい相談室」と題し、身体に出るさまざまな症状やお悩みについて相談し、ご指南いただきます。
第2回目は、多くの女性が抱える「冷え」のお悩み。
今回は全身の冷えに悩む、文房具ブランド「水縞」の植木明日子さんをゲストにお迎えしました。
RELIEFWEAR鳥羽由梨子とともに、3回に渡り連載をお届けします。
左からRELIEFWEAR 鳥羽由梨子、日本身体文化研究所 矢田部英正先生、水縞 植木明日子さん
◆ 聞いて納得!冷えの正体
鳥羽:今回のテーマは「冷え」。
一口に冷えと言っても、人によって、タイプや悩みも違うと感じます。
ゲストの植木さんは、寒がりで、年中冷えを感じる「全身冷え」タイプ。
対して私は、暑がりで汗っかき。ですが、手足の末端は冷える「部分冷え」タイプ。
本日は冷えに関するお悩みについて、たくさんお話を伺えたらと思います。
矢田部先生、植木さん、どうぞ宜しくお願いします。
ところで、植木さんが冷えで悩むようになったのは、いつ頃からですか?
どのような症状にお悩みですか?
植木さん(以下、植木):社会人になってから顕著に冷えやすくなりました。
普段はブランド運営やデザインの仕事で、デスクワークが中心です。
運動不足も寒がりの原因として大きな気がしています。
いまは運動習慣がほとんどなく、寝る前に少し筋トレやストレッチ、子供の送り迎えで自転車をこぐ程度。
日頃から、冷たいものを取りすぎない、足や身体を冷やさないことは気をつけているのですが…。
それでも、年中全身に寒さを感じやすく、風邪もひきやすいのが悩みです。
特に冷房の風に弱いですね。周りにいる人は平気でも、自分だけすぐに冷えてしまう。
どこへ行くにも常に寒さを気にして、上着や靴下は夏でも手放せません。
鳥羽:同じく私も、靴下は夏でも欠かせないですね。
でも基本的には、暑がりで汗っかき。冬でもコートの中で汗をかくこともあるほどです。
上半身は暑さを感じやすい。でも足元は冷えて、身体の上と下でちぐはぐしている感覚を覚えます。
私も20代後半からデスクワーク中心の仕事になり、足の冷えが気になり始めました。
矢田部先生、冷えはそもそもなぜ起こるのでしょうか?
人によって、感じ方や症状が違うのはなぜですか?
矢田部先生(以下、矢田部):冷えとは、身体の流れが弱まっている時に起きやすい症状です。
血流や体液がよく巡っていれば、身体は冷えにくく、外部環境の変化に対しても適応力が高まります。
暑くても寒くても、自分自身の「身体に流れを起こす力」によって、冷えを跳ね返すことができるようになります。
反対にその力が弱くなると、ちょっとした変化にも影響を受けやすくなります。
矢田部:鳥羽さんのように、足元や末端が冷えるという方。
そういった方は、上半身の血流は盛んであるのに対して、冷えを感じる末端の部分は流れが弱まっていることが考えられます。
対して植木さんのように寒がり・全身が冷えるという方は、身体に血液を巡らせる力が全体的に弱まっているのかも知れません。
ウィークポイントは人によって違うので、冷えの出方にも違いがあらわれます。
原因についても、身体的な負荷による場合もあれば、精神的なストレスによることもあり、さまざまです。
お話を伺っていると、植木さんは責任のあるお立場で仕事や生活するなかで、細々と気をまわすことが多いのではないでしょうか。
植木:そうですね。
5歳・7歳の子どもを育てながら働いていて、とにかく時間がなく、日々手一杯な状況です。
仕事でも生活でも、性格上、いろいろと気にするタイプだと思います。
矢田部:毎日気遣いしすぎて疲れを感じていると、身体的にも症状が出てきます。
心の緊張度が高い状態でいると、まず内臓がダメージを受けて循環の機能が弱まってしまいます。さらに筋肉が萎縮して血管が狭くなります。そうすると血液の巡りが弱くなって全身が冷えてしまいます。
植木:精神的なことも、身体の冷えにつながっているのですね。
確かに私の場合、忙しさや気持ちの面で、自分で自分の内側を乱している気がします。
どうしたら淡々と整え、本来持っている身体の力を取り戻せるのでしょうか?
矢田部:まずはご自身の緊張に気づくこと。
特に精神的な緊張は、身体の内部の深いところにコリを作ってしまうことが多いです。
肩・みぞおち・腎臓など、身体の内部の流れを止めてしまうポイントは、人それぞれです。
よく自分の身体を観察していく。
ご自身の身体のどこが緊張しやすく、流れを止めているのか。
それを自覚し、労ってあげる。
冷えにつながっている緊張に気がつけば、身体の方で自然と修正をしはじめます。
まずはご自身の身体に気づきを得ることが改善の出発点です。
さらに緊張をゆるめるための具体的な方法がありますので、それを実践していただければ、冷えは未然に防ぐことができるようになります。
→「冷えのお悩み | 中編」(9月末公開予定)へ続く