おしえて!!からだせんせい 矢田部英正先生 ー季節と身体ー#立春・後編

前編では、矢田部先生の身体についての研究と二十四節気七十二侯の暦について教えていただきました。
後編では、暦と身体の関係について伺います。

身体のサイクルに合わせて、上手に流れに乗ることの大切さ

季節によって起こる身体の不調と付き合うには、どうしたら良いですか?

私たち人間も、自然の一部です。
季節の変化により、作物と同じように、身体にも同様のサイクルがあります。

二十四節気七十二侯の暦で言うと、夏至と冬至の頃は暑く寒いですが、身体は変化が少なく「安定期」。
春分と秋分の頃は、季節の変わり目で身体にとっては変化が大きく「不安定期」になります。

春秋は気候は過ごしやすいですが、身体は不安定。
夏と冬は暑く寒いので、その時期に沿った手立てを講じておくと、体調も経過しやすくなります。

それぞれの季節で見ていくと、春は「芽吹」、夏は「繁殖」、秋は「収穫」、冬は「貯蔵」の季節。

芽吹きの春は、冬に溜まっていた老廃物を排出する季節ですし、
繁殖の夏は、汗がたくさん出る発散の季節なので、夏バテにならないような対策が必要な時期です。
収穫の秋はその時に吸収したものを、うまく解毒しながら冬に備え、
貯蔵の冬は、秋に収穫したものの中から悪いものを排泄して、エネルギーを蓄える時期。

一番大きく作用するのは、身体の血液や体液の流れです。
栄養の吸収や老廃物を排泄し、デトックスすることに大きく関係しているので、
この流れを順調にまわしておけば、無駄なものは身体から自然と出て行ってくれるので、
体調が著しく悪化することは避けられます。

1年のおおまかな季節と身体の流れを知ること。
そして暦でこまかく季節の微妙な変化を捉えること。
「安定期」と「不安定期」があり、「吸収」と「排泄」のバランスをとること。
そうすることで、作物をダメにしないのと同様、
体調を崩さないような工夫で1年を乗り切りやすくなります。 

立春期の身体。気をつけることは?

暦の上では春の立春期ですが、2月は内気がこもりやすく、まだまだ寒いため体調を崩しやすい季節です。
この時期は、「身体を温める」「水分をよく摂って、血の巡りをよくする」こと、
そして、「エネルギーを発散させる」ことがおすすめです。


矢田部先生おすすめの立春期の養生法:「半身浴」「乾布摩擦」「散歩や山登り」「豆まき」

 


今回は季節によって変化する身体の大きな流れを教えて頂きました。
次回は、3/20頃にお届けする「春分編」です。

春分の時期は、不安定期で身体がゆらぎやすい季節。
そんな季節に備える、春の身体の特徴と養生実践法を次回はお届けします。どうぞお楽しみに。

 

今回のからだせんせい:日本身体文化研究所 矢田部英正先生

からだの歴史を研究する文化史家(武蔵野美術大学講師)。
日常的な動作の中に歴史や文化があることを発見し、自分のからだを上手に使いこなす技術を伝える「身体技法講座」を展開。
からだを整える椅子や食器を制作する作家でもある。著書多数_『坐の文明論』晶文社、『たたずまいの美学』中公文庫など。