おしえて!!からだせんせい 矢田部英正先生 #春分・知識編1

明日3月20日「春分」を迎えます。
春夏秋冬、巡る季節とともにわたしたちの身体も呼応し、変化しています。
身体のことを正しく知り、必要な養生法を手に入れ、毎日をすこやかに過ごしたい。

そんな思いから、「日本身体文化研究所」の矢田部英正先生にお話を聞く連載企画。
立春、春分、夏至、秋分、冬至の1年をかけて、季節と身体の関係性と、養生法を教えていただきます。

前回の序章「立春編」につづき、いよいよ本編がスタート。
今回からは知識編と実践編でお届けしていきます。


◆春分期の季節と身体は?不調になりやすいのは、なぜですか??


昼と夜の長さがちょうど同じになるのが、「春分」です。
昼と夜の長さが同じ時期というのは、気候も身体も不安定になります。
不安定というのは、動きが大きいということ。
潮の満ち引きも大きく、人間も自然の一部ですから、体内の水分の変動も大きく、身体も不安定で壊しやすい時期になります。


あたたかな陽気に誘われて、土の中から虫が出てくる時期を「啓蟄」と言います。
それと同様に春は、「貯蔵の季節」の冬に溜め込んだ不要な老廃物が、毛穴や目・鼻などの穴から這い出ようとする時期です。
溜まった老廃物がパッと出て行けばよいですが、身体が緊張してこわばっていると簡単には出て行ってくれません。

身体がうまくゆるまないことで、老廃物がスムースに排泄せず、目や鼻の粘膜に溜まってしまいます。
そうすると、溜まった老廃物でアレルギー反応が出たり、不調になりやすいのです。




典型的な例である花粉症は、老廃物を身体の外に排泄しようとする働きが滞って、花粉にも過敏に反応し、アレルギー症状として出てきます。

花粉症が重い人の身体的特徴としては、首と肩がこっている人が多いですね。
特に肩甲骨周りの緊張をゆるめて、首のねじれを通すと鼻が通り始めます。

アトピーやじんましんなどの皮膚症状として出る人は、腎臓の働きが弱い傾向です。
血液を濾過して汗や尿に変える装置である腎臓がうまく働いてくれないから、皮膚からの老廃物がスムース排泄せず、皮膚に溜まったままで荒れてしまうのです。

不調は身体の弱い所、筋肉の緊張・鈍りのある所、日頃酷使している所に出やすい傾向があります。
首や肩、背中側の腎臓部分に振動や摩擦を与えると、内部の循環と経過が良くなります。


上手に経過して老廃物を出し切ってしまえば良いですが、首や肩甲骨の筋肉の緊張が強くくすぶっていると思うようにゆるまなくて、長引いたり障害になることも多くあります。
早めに発散しておくと、季節の流れに乗って、上手に経過していけるのがこの時期の特徴です。

とにかく春はデトックス。解毒を促すことが要です。

 

春分・知識編 2「春分期に心がけることは?暮らしの習わしとの関係性」につづく

 

矢田部先生が身体と暦について参考にしている書籍

 

今回のからだせんせい:日本身体文化研究所 矢田部英正先生
プロフィール
からだの歴史を研究する文化史家(武蔵野美術大学講師)。日常的な動作の中に歴史や文化があることを発見し、
自分のからだを上手に使いこなす技術を伝える「身体技法講座」を展開。からだを整える椅子や食器を制作する作家でもある。
著書多数_『坐の文明論』晶文社、『たたずまいの美学』中公文庫など。