おしえて!!からだせんせい 矢田部英正先生 #秋分・知識編1
春夏秋冬巡る季節の変化に、わたしたちの身体も呼応しています。
身体のことを正しく知り、必要な養生法を手に入れて、毎日をすこやかに過ごしたい。
そんな思いから、「日本身体文化研究所」の矢田部英正先生にお話を聞くこの企画。
立春、春分、夏至、秋分、冬至の1年をかけて、季節と身体の関係性や養生法を教えていただきます。
今月9月23日は「秋分」。過ごしやすくなりましたが、身体は不安定期に突入しています。
そんな季節に備えるため、今回は少し早めにお届けします。
◆秋分期の季節と身体の特徴は?
秋分は春分同様、昼と夜の長さがちょうど同じになる日。
太陽と地球と月が一直線に位置し、太陽が真東から昇り真西へ沈みます。
太陽や月の引力が強くなるため、潮の満ち退きが大きく不安定な状態に加え、
台風や気温・気圧など気候の変動も大きい時期。
身体内部の水分にも影響し、秋分の頃は体内の変動が特に大きくなります。
夏の疲れを残してしまい夏バテ気味の方は、この時期の気圧や気温の変化で、身体がダブルパンチを受けやすい状態です。
内臓など循環器から体調不良を起こしたり、花粉症のような症状が出たり。
自律神経(*1)への影響も大きいため、気分が滅入って鬱々とした症状が出ることもあります。
身体の不調がウィークポイントに出やすくなりますね。
◆とにかく自分を労って、身体の声を丁寧に聴くこと
気温が下がり、動きやすい秋分期ですが、実は身体は活動方向に向いていません。
9月は特にハードワークは禁物。
休息が必要な時期に無理に動くと、体調を崩します。
身体が動きたくない時は、動ける時までしっかり休み、回復を待つこと。
無理をしないで、ゆっくり過ごすことが何より大事です。
コロナ禍はゆっくり休養を取るのに向いています。読書の秋を楽しんでみても。
10月の1・2週目になると、気候の不安定な状態は落ち着き、体調も自然と良くなっていきます。
身体が気持ちよく活動できるタイミングを、上手に掴むことがポイントです。
「啐啄(そったく)の機」と言って、鳥が卵から孵るのは、ヒナ鳥が卵から出ようと内側からつつく(啐)と同時に、
「今だ!」と母鳥が外側から殻をつつく(啄)からです。
その「今だ!」というタイミングを掴む能力を、動物は本能として持っています。
自分の身体に関しても、身体の欲求に従って、行動していくべき瞬間を見極めるセンスを養っていきましょう。
そのセンスを磨くには、一定のリズムや習慣を取り入れて生活してみるのが良いですね。
そうすると自分のフラットな状態を知ることができ、
不調の時にいつもと違うという感覚が掴めたり、不調が起きた理由が分かってきます。
逆にいつもめまぐるしい生活をしていると、身体の変化や不調の原因も見えづらくなります。
日頃から、自分の身体の声を丁寧に聴くことを大事にしましょう。
*1 自律神経とは
内臓の働きや呼吸・血圧、代謝など自分の意思とは関係なく働き続けているのが自律神経。
主に昼間や活動時に働く「交感神経」と夜やリラックス時に働く「副交感神経」があります。
#秋分・知識編2へつづく
今回のからだせんせい:日本身体文化研究所 矢田部英正先生
プロフィール
からだの歴史を研究する文化史家(武蔵野美術大学講師)。日常的な動作の中に歴史や文化があることを発見し、
自分のからだを上手に使いこなす技術を伝える「身体技法講座」を展開。からだを整える椅子や食器を制作する作家でもある。
著書多数_『坐の文明論』晶文社、『たたずまいの美学』中公文庫など。