おしえて!!からだせんせい 矢田部英正先生 #秋分・知識編2

#秋分・知識編1では、秋分期の季節や身体の特徴と、不安定期への向き合い方について教えていただきました。

日頃から自分の身体の声に耳を澄ますことが大事。
今回は秋分期におすすめの養生法や習わしについて、教えていただきます。

◆秋分期はゆるめて過ごす

秋分期はストレスを溜めないで、自分の身体とこころが喜ぶことをして過ごしましょう。

身体が不安定期の春分と秋分の時期。
春分期は冬にこもっているものを発散する必要があるため、積極的に動くことが必要です。
対して秋分期は夏の活動期に発散した後なので、とにかくゆっくりしていて大丈夫。

お風呂に浸かっている時間は、自分の身体やこころに向き合う瞑想状態になりやすいので、
バスルームを暗くして入るのもおすすめです。
ゆるめたい時期は、ぬるめのお湯に長く浸かる半身浴をします。
活動的な時期は、熱めのお湯に短時間入り、湯上りに水をサッとかけると肌が引き締まります。

食養生で言うと、甘いものは身体がゆるむので、小豆やきな粉・はちみつなどを使った栄養価の高い甘味がいいですね。

秋冬は気温が下がり汗をかかなくなるので、水分不足になりがちです。
冷たいものは基礎代謝を下げるので、お茶など常温か温かいもので水分をしっかり摂りましょう。
生姜湯やくず湯は栄養価が高く、同時に水分も摂ることができますね。

気温が下がって動ける時期なので、真面目な人ほど要注意。
ゆるめて過ごし、自分を労わりましょう。


◆自然との調和と習わし


年中行事や習わしは、自然との調和を通して、生活や身体を整えていく役割を担っていました。
身体が不安定期の9月は、こうした年中行事がたくさん用意されています。

本日9月9日は一年で一番縁起の良い日とされる重陽(ちょうよう)の節句です。
奇数の「陽の日」は縁起が良いとされ、その中でも最も大きい正数9が重なる日を「重陽」と呼びました。

「菊の節句」とも言い、菊の花びらを日本酒に浮かべて、香りを移した菊酒を飲む習わしがあります。
菊の解毒作用と清々しい香りの菊酒は、浄化と祓いの効果があるとされ、飲まれてきました。

三日月が浮かび上がる木のトレーと器は矢田部先生の作品。

十五夜のお月見では、月を見ること自体が瞑想に近い状態になります。
満月を見上げながら、ゆったりとリラックスし、月の引力に身体を同調させ、調和を図っていたのでしょう。

秋分の日やお彼岸があるのも、親しい人々と集まって、おはぎや甘いものを食べながら楽しく過ごすため。
自分を労わるための手立てとして、年中行事は理にかなっているんですね。

季節の習わしを楽しみながら、どうぞゆっくりとお過ごしください。


#秋分・実践編1へつづく

 

今回のからだせんせい:日本身体文化研究所 矢田部英正先生
プロフィール
からだの歴史を研究する文化史家(武蔵野美術大学講師)。日常的な動作の中に歴史や文化があることを発見し、
自分のからだを上手に使いこなす技術を伝える「身体技法講座」を展開。からだを整える椅子や食器を制作する作家でもある。
著書多数_『坐の文明論』晶文社、『たたずまいの美学』中公文庫など。