からだせんせい相談室 | プロローグ 不調って?

身体のことを正しく知り、必要な養生法を手に入れて、毎日をすこやかに過ごしたい。
そんな思いから、日本身体文化研究所の矢田部英正先生にお話を聞く企画。新連載がスタートします。
今シーズンは「からだせんせい相談室」と題し、身体に出るさまざまな症状やお悩みについて相談し、ご指南いただきます。

第1回目は、私RELIEFWEAR鳥羽由梨子が、長年の悩みである「足のむくみ」について相談します。

本編に入る前に。
私が矢田部先生の「身体技法講座」に通い始めて、2年が経ちました。
以前は不調になる度に、自身の身体や症状について、あれこれと悩んでいました。

ですが講座に通うようになり、痛みや不調に対する見え方がぐるりと変わり、とても楽になりました。
そもそも不調ってなんだろう。身体へはどう向き合っていったら良いの?ということを、あらためてお聞きしました。

◆不調って??

ーむくみのような慢性的な症状から、花粉症など季節柄出る症状まで、身体に起こるさまざまな症状や不調について、教えてください。
なぜ起こるのでしょうか?どうやって向き合うと良いですか?

痛みなどの症状が起こるのは、実は身体が動きを要求しているサインなのです。

まず症状とは、自分のウィークポイントに出やすいものです。
扁桃腺やお腹に出たり、皮膚にかゆみが出たり、肩や腰・首に痛みが起こったりします。
人それぞれ様々な形で出るのは、体型や体質が違い、緊張しやすい部位も違うからです。

時に身体は、その緊張や停滞している部分をゆるめようとします。
身体が何らかの動きをもたらすことを要求しているから、痛みという信号を送っているのです。

たとえば、時々風邪をひいて熱を出すのも、身体全体に変動を起こすため。
今の季節でいうと、花粉症という形でくしゃみや鼻みずが出たり、肌のかゆみなどが出ます。
そのような症状が現れるのは、春になり、冬の間に溜め込んだ不要な老廃物を排泄しようとしているからなのです。





ですから、“不調”と”健康”を対立概念にしないことがポイントですね。

不調や痛み・風邪というものは、身体が自然な状態へ向かうための1つのプロセス。
身体が良くなる前兆と考えてみる。

目先の痛みや症状は確かに苦しいものです。
しかし出ている症状を薬で下手に抑え込んでしまうと、排泄したいものが身体の中に留まってしまいます。
そうすると一時的に症状は緩和されても、また別の形を取って、違う症状が出てきます。

不調や痛みは治すものではなく、「経過」するものと考えると、付き合いやすくなります。


◆当たり前だけど盲点! 不自然な状態が不調を招く


不調を考える上でもう1つ大事なことがあります。
それは、本来ある「身体の自然」の状態を知ることですね。

「身体の自然」とは大きく分けて2種類。「形の自然」と「流れの自然」があります。
形が不自然になったり、流れが滞ったりすることで、痛みや不調はもたらされるのです。
「形と流れ」という2つの観点を意識して、身体を見ていくと良いでしょう。

たとえば、不自然な状態の姿勢や動作を続けていると、筋肉に無駄な負担がかかります。
するとその負担が筋肉を固く緊張させ、コリを起こし、痛みが生じます。
緊張が血管を収縮させて圧迫すると、身体の流れも滞ってしまいます。

また身体の流れである血液やリンパ液・消化液などが滞ると、循環が悪くなる。
すると、冷えやむくみをはじめ、さまざまな不調や病気にも繋がります。




ですので、形と流れを整えること。
筋肉や関節に負担をかけない姿勢を身につけて「形の自然」を取ること。
身体を温めたり運動することで血流を促進させて、「流れの自然」を取ることが必要です。

それには、身体をゆるめることがポイントですね。
東洋には、呼吸法やヨガ・太極拳といったゆるめる技法がたくさんあります。
それらを活用して、身体の緊張をほぐしてあげる。
身体をゆるめてリラックスすると、不自然な形は解消されます。
すると、流れがついて、不要なものも排泄してくれます。

「身体の自然」を保てたら、健康はおのずとついてきます。

 

次回はいよいよ本編。「むくみのお悩み 前編」へつづく。

 



からだせんせい プロフィール
日本身体文化研究所 矢田部英正先生

からだの歴史を研究する文化史家。武蔵野美術大学講師。
日常的な動作の中に歴史や文化があることを発見し、自分のからだを上手に使いこなす技術を伝える「身体技法講座」を展開。
個別指導の施術プログラム「整体コース」や、音楽家のためのボディワークも行なっている。
その他、からだを整える椅子や食器を制作する作家でもある。
著書多数_『坐の文明論』晶文社、『たたずまいの美学』中公文庫など。
http://corpus.jp