なにすてた? #04 デザイナー 石川愛子さん | 前編 居場所リセット
仕事に家事に、ひとによっては育児や介護。
忙しく働くわたしたちは、こころも身体も重くなりがち…ですよね?
いつも軽やかで、すこやかなひと。
ときどき出会うそんなひとたちは、「手放し上手」だって思います。
手放すことで気づき、前に進むことがある。
それがこころと身体の養生につながるように思うのです。
さまざまなことを見つめ直すこのご時世。
連載企画「なにすてた?」では、素敵なひとたちのこころの断捨離ものがたりをお聞きしていきます。
前編 居場所リセット
第4回目は、グラフィックデザイナーの石川愛子さんです。
石川さんはデザイナーでありながら、手相を読む「てよみ」や、ネコ型のクッキーを製作販売する「デジネコクッキー」の活動をされています。デザインに手相にクッキー?その不思議な組み合わせと石川さんの醸し出す雰囲気は、ずっとどこか気になる存在でした。
石川さんのブログには「内臓レジャー」という不思議なタイトルとともに、「私は1日3食食べるのを完全にやめた」と記されていました。
さらに2021年1月には、長年住んでいた東京・目黒から神奈川・辻堂へお引っ越し。
手放したものがたくさんありそうで、お話を伺ってみたいと思い、石川さんの新居にお邪魔しました。
◆モヤモヤした先に
ーどうしてお引っ越しされたのですか?今の住まいを選んだのは?
きっかけは、やはりコロナ禍でした。
ずっと引っ越したいとは思っていたんです。
目黒では、同じマンションに12年間住み続けました。
古いけれど手入れの行き届いた中庭が気に入っていて…。
都心に住んでいると全てが整っているんですよね。
建物から公園から川の流れまで、ほとんどが人工的に作られたもの。
でもコロナ禍で強く思ったのは、自然や身体感覚に近い「人間がコントロールしていないもの」を身近に感じていたい、
っていうことだったんです。
緊急事態宣言でどこにも行けなくなった時、モヤモヤがどんどんたまっていって…。
寝る前に海の光景がよく浮かぶようになったんです。海辺で育ったからですかね。
それで引っ越そうと考え始めました。でも、田舎に行って…というのは自分には難しい。
デザインの仕事もあるから、都会や便利さとの折り合いがある程度つく場所にって。
そうして落ち着いたのが今の辻堂の住まいです。
目黒の部屋の3分の2くらいの広さだし、当初の希望とは色々と違いました。
でもこの部屋に初めて来た時、ベランダから富士山が見えて、空も広くて、なんかいいなと直感的に決めました。
あとは近くに1日過ごせるような大きな本屋さんもあって…。
物欲が満たせる場所があるのも、自分にとってはかなり大事だったかもしれません(笑)。
◆自分の外に中心があった
ー引っ越していかがですか?
部屋が狭くなったことで物も減って、本当に楽になりましたね。
デスクとベッド以外の家具や、ここには見合わないものは、全部手放して引っ越してきました。
色々な物があることって、結構しんどかったんだなって。
持ち物が減ってみて、改めてわかりました。
今の部屋は狭いこともあって、ワークとライフの垣根もありません。
仕事も生活も自分の興味のあることも、全部が行ったり来たりしながらバランスを取る方が、わたしには合っていたんです。
以前の部屋は、仕事部屋と生活スペースを分けて、ONとOFFを無理矢理作っていました。
ゆるやかに空間を仕切るカーテンや吊り棒もDIYで。
ソファも本棚もテーブルも、この部屋にあるものはすべて、いまの生活に必要なものを自ら作っていったんだそう。
それに以前は広い部屋を活かして、色々な人を招いてました。
年末には大人数で鍋パーティーをしたり。
母が算命学という占いをしているので、月1回母の占いサロンも開いていました。
でもコロナ禍でそれも全てできなくなって、こんな広さは自分には必要ないなって。
そもそも部屋選び自体が、立地も広さも作りも、なんとなく世間が思う「デザイナーっぽさ」を基準にカッコつけて選んでいたかもって…。
それは「相手を安心させるための自分」であって、自分が本当に望んでいたことではなかったと、やっと気づきました。
デジネコクッキーお面を特別に作って登場。通常の9倍サイズ!!占いをする上で、中庸な存在であることを大事にしている石川さん。
中編「 わたしの心地よさはどこに? 」へ続く