なにすてた? #04 デザイナー 石川愛子さん | 中編 わたしの心地よさはどこに?

中編 わたしの心地よさはどこに?

第4回目は、グラフィックデザイナーの石川愛子さんです。
石川さんはデザイナーでありながら、手相を読む「てよみ」や、ネコ型のクッキーを製作販売する「デジネコクッキー」の活動をされています。

石川さんのブログには「内臓レジャー」という不思議なタイトルとともに、「私は1日3食食べるのを完全にやめた」と記されていました。
さらに2021年1月には、長年住んでいた東京・目黒から神奈川・辻堂へ引っ越し、自分の外に中心があったと気がついたそう。

前編「居場所リセット」につづき、新居にお邪魔してお話を伺いました。 

◆常識って、なんだろう?

ー自分に向いていないことを辞めた石川さん。心地よさに向き合っていったプロセスは?


自分の外に中心を置いていることって結構あるなと、以前から度々感じていました。

「てよみ」の活動で手相を見ていると、30代くらいの女性たちから聞かれることが多いんです。
「結婚したいんです」「私、できますか?」と。
そういう時に「なんでしたいんですか?」と尋ねると、多くの方はしばらく考えて「わからない…。でもそういうものだから。」って。
別に誰かに結婚を勧められて言ってるわけでもないんです。

手相には結婚線という線があってそれも見てみるのですが、そもそも線自体がなかったり…。
線は本人の希望によって現れたりもするので、彼女たちの手は言うほど結婚したいようには見えない。
それでよくよく話していくと「そんなにしたいわけではなかった」という方があまりにも多くて…。
ずっと不思議に感じていました。




おそらく、彼女たちは知らず知らずに「結婚はするもの」と思い込んでいて、「していない自分」に勝手な焦燥感を抱いてしまったように思うんです。もちろん、一概には言えませんけど。
自分のことで考えてみても、「世の中の常識」を浴びて育ってきた結果、それがイコール「自分の望み」のように捉えてしまっていることも結構あるなって…。

だから、世の中の「こうあるべき」を一旦点検してみようと思ったんです。


◆わたしにとって「ちょうどいい」

- 常識を点検してみて、なにか変化がありましたか?

わたしは生活リズムが人とは違う、変だなって。昔から感じていました。
朝起きなくてはいけない。みんなが当たり前にしているこの常識も、本当にわたしには無理なんです(笑)。

でもいまの自分の状況をよくよく考えてみたら、仕事はフリーランスで、ひとり暮らし。
朝起きられないからといって、誰かに迷惑をかけることもない。
だから、何を頑張って、誰かの基準に当てはめる必要があるんだろうって…。
せっかくフリーなのだから好きに生きようって居直りました。

冒頭の「内臓レジャー」のブログにも書きましたが、解剖学者の三木成夫さんの書いた『内臓とこころ』(河出文庫刊)を読んでから、1日3食きちんと食べることも完全にやめました。




体内時計には、太陽に関係する24時間の「昼夜リズム」以外に、潮の満ち引きに関係する24.8時間の「潮汐リズム」も深く影響しているそうなんです。睡眠や内臓のリズムも天体の運行法則に従って、人によってさまざまだと知りました。
それで、人とリズムが違うこともおかしいことではないんだって思えたんです。

思い起こせば、子どもの頃から給食を無理して食べるのも辛かった。
人とご飯を食べる約束があれば、コンディションを整えるために前日から食事を控えるほどだったんです。

実際に、1日3食食べるという義務感を手放して、自分のお腹がすいたという感覚に従ってみたら、こんなに健やかなことはなかった。
「胃袋本位」の自由を手に入れてしまったので、もう元には戻れませんね(笑)。
1日1食くらいが、わたしにはちょうど良かったんです。

以前は「当たり前」や「こうあるべき」に自分を当てはめて、そうしなくちゃいけないと思っていたから辛かったんです。
自分に合わないことは外してもいいって、いまは思うようになりました。

ただ食べることは大好きなので、回数が減った分、食べることへの執念が増してしまって…。
本当に1口もつまらないものを食べたくないんです(笑)

 

豆乳と乳酸菌を使って豆乳ヨーグルトを作ったり、あずきと麹で作った発酵あずきを常備したり。健康に良さそうとは関係なく、単純に味が好きで、色々実験しながら作っているんだとか。



後編「 ピン止めしない人生 」へ続く