なにすてた? #06 uraraka 高橋千草さん | 後編 積み重ねた先に

「なにすてた?」第6回目は、uraraka店主 高橋千草さんです。

urarakaは、2020年4月に群馬県桐生市にオープンした、暮らしに寄り添う道具や衣服を扱うセレクトショップ。

来る人にとって、晴れやかな気持ちになれる、穏やかな場所でありたい。
そんな思いをこめて、urarakaと名付けたのだそう。
お店の名前を表すように、朗らかでゆったりとした雰囲気をまとう千草さん。

『中編「ないもの」と「あるもの」』につづき、お届けします。 

後編 積み重ねた先に

◆変わらない、だけど。

ー「良く在ろう」とすることをやめて、ご自身の中で変化はありますか?

なんて言うか、目の前にある現実は、あまり変わらないですね。
絶望的になっていたのは、私の頭の中だけで…。

ひとりこの世の終わりみたいな日々を過ごしていても、ちゃんと穏やかな日々は存在していて。


落ち込んで鬱々とするのも、幸せになるのも、自分の捉え方や気持ち次第だなって。
結局、頭で考えてばかりで「感じる」ことができなくなっていたなって思うんです。

いまだにネガティブな方に引きずられたり、気持ちが落ちそうになることも、あったりしますけど。
そんな時はベストボディライフ ケイコ先生のYouTube動画を見ながら、筋トレですね 笑

ストレッチと、曜日によって筋トレや有酸素運動を。
全部で30分くらい、身体を動かします。
筋トレしている間って、フッフッフッーって、ただただ筋肉を動かして、キツさを感じて。
頭で考えない、無心になって、自分にも向き合わない。
そういう方が、わたしには合っているというか。

ヨガもやってみたんですけど、自分に向き合っていく、じゃないですか。
自分には散々向き合ってきたので、いまはいいかなって(笑)
 

―これからはどんなことを大事にしたいですか?

いろいろ情報が日々流れ、溢れていますよね。
自己肯定感を高めましょうとか、自分のことを愛しましょうとか。
目に入ってきたり、耳にしたりすること、多いじゃないですか。

でも最近は、自分を好きじゃなくても、いいんじゃないかって思うんです。
理想とか妄想に縛られて、いまが過ぎ去っちゃうのは、もったいないなって思えるようになったから。

 

ダメな部分があってもいい。毒があってもいい。
常に満たされてなくてもいい。

自分をもっと高めてって、昔は思っていたんですけど。
いつまでも上を目指すのは終わりがないし、どこか孤独でしんどいなあって…。

いまは、誰かと手を繋いで、こころが豊かになるような。
温かさとか幸せが伝わっていくような。
そんな風に、じんわり広がっていくような物事を選びたいですね。

それに、特別なことより、なんでもない事を楽しむ。
ひとり静かな家で、コーヒーを飲んで、畳でゴロンとか。

まずは自分が気持ちよくいられるかが大事かなって。
頭で考えることより、五感で感じることやこころの感覚の方が、実はずっと確かで。

ときには、「自分に向き合うこと」も捨てて、思考を外して。
感覚を大事にしたり、行動を積み重ねたり。

「しなきゃ」って考えるより、「したいな」で動ける。
今のわたしには、そういうことの方が大切だなって思うんです。

 

◆身体にしたがってみたら

ー インタビューを終えて 

わたしたち夫婦が敬愛する、ジェーン・スーさんが昔ラジオで言っていた。
「自分探しは、探しているのも見つけるのも自分だから、永遠に見つからない。」
そんなエピソードをふと思い出しました。

いざ探そうと考えてみても、やりたいことや自分のことなんて、案外わからない。
何かをやっていくうちに、こういうことが好きだなとか、やりたいなと思えたり。
やってみたら、意外な自分が発見できたり。
自分という輪郭は、行動の先にあったり、人との関わりの中で、見えたり気づいたりしていくものなのかな。そんな風に思います。

「自分軸をつくる」「自分らしく」
近ごろはとくに、そんな言葉が溢れ、それもまた「自分疲れ」を起こしている気もします。
自分に向き合うことが多すぎるから、少しは自分から離れてみるのもいいかもしれません。


最近、大事にしているのは、身体の感覚にしたがってみること。

いつの頃からか、頭ばかりで考えることが増えてきました。
ぐるぐると思考を巡らせていると、腰も重くなりがち。

「腹が立つ」「血が騒ぐ」「胸が張り裂けそう」
昔のひとたちは、使っていた言葉からわかるように、今よりも身体とこころが一致していたように思います。

なんだか足が重い。でも行かなくちゃ。
お腹が痛い。けどがんばらなくちゃ。
そんな、ちぐはぐな身体とこころ。

どんなに思考でねじ伏せても、身体は正直です。

身体が心地よい、という感覚にしたがって動いてみたら、意外と答えはシンプル。
見つからなかった答えも、自然と見つかるかもしれない…。

誰かではなく、自分にとっての「心地よさ」に従って、動きはじめた千草さん。
気分が落ち込む時期は、いまもときどき訪れるそう。
でも、雨や嵐も受け入れた先に、うららかな日々が待っていますね。

PHOTO&TEXT / RELIEFWEAR
 

プロフィール  uraraka 高橋千草さん 

群馬県前橋出身。小学6年生と4年生の二児の母。
2020年4月に群馬県桐生市にオープンしたセレクトショップurarakaの店主。

いつものものが愛おしいものであるように…
日々の暮らしが心地よいものになるように…
そんな毎日使いたくなる道具や衣服などを常設展開するほか、
POP UP STOREや原画展、お話会に演奏会などのイベントも企画開催。
いつでもふっと心を解放できる穏やかな場を提案している。

https://www.classico-life.com/uraraka/
instagram: @uraraka_chigusa