なにすてた? #03 あたらしい日常料理ふじわら 藤原奈緒さん | 中編 ほっとした自分がいた もっと自由になっていい
中編 ほっとした自分がいた もっと自由になっていい
第2回目は、「あたらしい日常料理ふじわら」を主宰する、料理家の藤原奈緒さんです。
「家庭のごはんをおいしく、手軽に。」をテーマに、オリジナルの調味料『ふじわらのおいしいびん詰め』を手がけています。
東京・東小金井で2020年夏まで食堂を開いていた藤原さん。
コロナ禍をきっかけに食堂を一旦お休みし、「心が幸せになった」とInstagramで記されていました。
食堂への葛藤と手放すまでをお届けした前編「『家庭のごはんをおいしく』したかったから」につづき、東京郊外にあるご自宅でお話を伺いました。
◆わたしのままでいいんだ
ーお店をお休みして、いまの心境はいかがですか?
すごく楽になりました!
食堂の営業をしていた頃は、調味料の製造とバランスを取りながら仕事をしていたんですけど、性質が真逆の仕事を一緒にやることって、とても大変だったな、と。
いまは製造だけになって、仕事が単純になったので、無理なく進められるようになりましたね。
©︎大沼ショージ
食堂は、同じ場所で自分をひらいた状態で、常にお客さまを待つものなので、元々わたしには向いていないことを実感していました。
苦手なことをすごく頑張ってやっていたんだなって、いまは感じます。
わたしはほんとうは、スケジュールを立てるのが苦手で、臨機応変にやるほうが得意なタイプ。
コロナ禍で1週間先のことがわからない状況がやってきて、すごくほっとしたんですよね。
わたしのままでいいんだ、もう違う自分を目指さなくていいんだ、という気持ちになったんです。
◆料理をラクに、楽しくしたい
ー新たに始めたことは?
料理のパーソナルトレーナーを始めました。
元々わたしの作った料理を食べてほしい、という気持ちはあまり強くなくて、「料理が楽しくなった」「家族が喜んでくれた」と言われる喜びの方が大きかったんです。
集まれない、という状況を逆手にとって、ずっとやりたかったことをやってみることにしました。
その方のお悩みを一緒に解決していくようなマンツーマンの料理教室です。
自炊の機会が増えて、しんどい状況の人も多いですよね。
ご自分の料理に対して、もっとちゃんとしないと!と思っている方もすごく多いと思います。
でも、なんで手を抜いちゃダメなんでしょうね?ずっと同じ料理を作ってもいいじゃないですか。
そんなふうに、食べること・作ることへの“不要な思い込み”ってたくさんあって、
そこから自由になれると、解放されることがあると思うんですよね。
長く料理教室をやってきて、これは人の人生を変える仕事なんだなって思うことが、たびたびありました。
その方の生活に合わせて、料理が楽しくなるやり方、考え方を提案できたらと思っています。
◆いつだって、“いま”の連続だから
―現在の藤原さんが大切にしていることは?
“いま”を大事にして、流れに任せる、ことかな。
仕事をしていると、過去か未来にいることが多いと思うんですよね。
過去の後悔やこれからの不安で、自分をいっぱいにしていることもよくある。
でも、生きている時間って、いま、の連続だな、って思って。
不必要に過去とか未来のことを考えないで、“いま”感じたり、“いま”来たものを受け入れることを大事にするようになりましたね。
無理に自分が状況を進めたり、選んだりしないで、
自分に起こることを信頼していくと、物事って自然に進んでいくな、と思うんです。
持ちすぎていた器や溢れていた本も、現在少しずつ手放し中。
それから、失敗してもいいんじゃないって思うようになりました。
またやり直せばいい、と思ったほうが気楽。
それに、失敗からしか得られないものもある。それこそ貴重なものなんじゃないかって。