なにすてた? #05 leton 石崎恵子さん | 中編「楽しい」をいつも、自分の手で

第5回目は、美容師の石崎恵子さんです。

石崎さんは7歳、5歳、1歳の3人のお子さんを育てながら、ヘアサロンleton(レトン)を営んでいます。
一昨年の秋までは、某有名ヘアサロンに18年間勤めていました。
ですが、3人目のお子さんの妊娠をきっかけに退職し、2021年1月に仲間たちと銀座にletonをオープンさせました。

わたしの髪は長年、石崎さんにお世話になっています。
髪を切りながら、仕事のこと、生活のこと、子どもや家族とのことをおしゃべりしていると、
石崎さんはいつも軽やかで、なんだか楽しそう。

そのすこやかさの秘密を知りたくて、letonにお邪魔してお話を伺いました。
前編「ずっと続けたかった」につづき、お届けします。 

中編「楽しい」をいつも、自分の手で

◆長時間働いても、いいバランスに 

― 退職したのち妊娠中にも関わらず、4ヶ月後にはletonをオープン。
その前後ほとんど産休育休を取らずに復帰した石崎さんに驚きの連続でした。

新サロンオープンから、ご自身に変化はありましたか?

3人目の長女を出産したのは、お店をオープンして2ヶ月後の3月下旬。
計画出産で結局4日前まで働いて、ゴールデンウィークの頃にはゆるやかに復帰しました。
周りからは、驚かれましたけど(笑)。

お客様のご理解おかげもあって、産後すぐの復帰を赤ちゃん連れという形で実現できたり…。
長女が保育園に通ってからは、週1回夜までお店にいる日を作れるようになりました。

夜の時間がご希望のお客様に対応できるのはもちろん、時短勤務では見えなかったスタッフの様子が見えたり、コミュニケーションが取れたり…。お店ベースでいられる時間ができるようになりました。

働く時間はこれまで以上に増えたのですが(笑)、この仕事が好きなので、自分にとってはいいバランスになったなと思っています。
柔軟というか…自分のペースでできることが増えて、やりたかったこともできているから。





旦那さんの協力のおかげもありますね。
私が夜まで働く日は、旦那さんが子どものお迎えから寝かしつけまで面倒を見て、子どもたちと過ごす時間が増えました。
それを彼も子どもたちも喜んでいるんですよね。私も子どもたちと離れる時間が少しできて、それが息抜きにもつながって、家族みんながいいバランスで過ごせている気がします。


―辞めてから、気づいたことはありましたか?

長く働いている内に、「こうしたい」っていう気持ちを、無くしていたんだなと気づきました。

お店の環境、業務で扱うアイテム、スタッフの教育、制度…。
沢山スタッフがいて組織が大きいと、自分が変えたいと思って変えられることって少ないじゃないですか。
だから、少しずついろいろなことを諦めていたんだなって…。
自分で考えなくても済むという良さもあるけれど、わたしはそれにモヤモヤすることもあって。

でもいまは、諦めなくて済むようになりました。
自分たちで変えられるし、こうしたいと思ったことに、きちんと向き合える。
やりたいことがありすぎて、追われているくらいです。(笑)

銀座駅から徒歩3分。技術力のあるスタッフが揃い、カジュアルな雰囲気で居心地の良さもあるleton。(画像提供:leton)

◆違う世界があるからこそ、切り替えられる

ー 日々たくさんの役割とタスクを抱えていると思いますが、いつも難なくこなしている印象です。
大変に思うことはないですか?切り替えはどんな風に?

身体が単純にできているので、一晩寝たら割とリセットされるんですが、それでも日々いっぱいいっぱい。
お客さんの髪を切ること、サロンやスタッフとのこと、家事に3人の子どもたちのこと。
正直抱えるものが多くて、大変(笑)

だから問題が起こったら、なるべくその日のうちその場で解消できるように。
できるだけ、クリアでいることはいつも心がけていますね。

でも、それぞれの世界があって、その時使う脳も全然違うからこそ、
それが良い切り替えになって、余計なことを考えずに済んでいるのかも…。

美容師の世界が終わったら、息つく間も無く、次は子どもたちとの世界。
次の世界に移ったら、もうそれまでの世界のことは1ミリも頭に浮かばない。(笑)

もちろんキャパオーバーになることもあります。
でもそれを認めて、相手にも認めてもらうようになったら、楽になれました。





―以前伺った、お子さん2人が別々の保育園に通っているというエピソード。
さらりと話していた時は、とても驚きました。負担に思うことはなかったですか?

迎えに行くのは私ひとりでしたけど、朝は夫婦でそれぞれの保育園に1人ずつ子どもを連れて行く日々でした。
当時長男は公立保育園に通っていて、次男も同じ園を希望しましたが入れなくて、
結果、次男は別の私立保育園へ行くことになって…。

同じ園に入れなくても、落ち込むことも、負担に思うこともなかったですね。
むしろ2人が別々の保育園に通うのは、面白そう!と思いました。

何事もいつも、なんとかなるって思っているんですよね。
なんとかするしかない、というのもありますけど(笑)
起きたことを「無駄」と思わず、私に与えられた時間と捉えるようにしています。


石崎さんとletonスタッフ(画像提供:leton)


それから「楽しい」や「楽しくなるように」を、一番に心がけていますね。

仕事に、子育てに、家のこと、お店やスタッフのこと。
「こうしなくちゃいけない」とか、「どう思われるかな?」とか、細かく気にしだすと疲れるじゃないですか。
いろいろと気がついてしまうタイプなんですが、あえて放っておく、気にしないでいる方が、周りがうまくいくこともある。
最近は、大事な部分が間違っていなければ、流れにまかせておこうと思えるようになりました。

でもいまの地点は、まだまだ理想というわけではないんです。
おばあちゃんになっても美容師を続けるために。
いま必要なことをやりながら、そこに向けて居場所づくりをしていきたいなと思っています。


後編 「髪とともに」(7月下旬公開予定)へ続く